2008
久々に、麻耶さんの『メルカトルと美袋のための殺人』を読み返していたら、妙に他の麻耶作品が読みたくなって、未読だった『名探偵 木更津悠也』を買ってしまいました。
タイトルからして、殊更「名探偵」と冠して、しょっていることが、また奇妙な懐かしさを呼び起こします。
きっとそういうことも含んで、採用されたタイトルなんでしょうけど。
「名探偵」と聞くだけで、なんだかドキドキワクワクしてしまうものです。ホームズ、明智小五郎にどっぷり惚れ込んだことのある身としては。
一種の連作短編集(中編集?)というのでしょうか。
4編がおさめられていて、異なる事件なのですが、どの事件にもいろんな形で、とある場所に出没するという「幽霊」のことがからんできます。
王道のホームズ&ワトソンコンビとして、木更津悠也&香月実朝が主人公ですが、ちょっと王道とは一味違うことが…!
香月実朝は、名探偵好きの読者以上に、木更津「名」探偵のファン。
とっても切れ者で、木更津ホームズよりも先に事件の解決の道筋もとっくに見出しているのに、香月ワトソンから進んでそれを提示することはなく、木更津の颯爽たる名探偵ぶりをうっとりと眺めています…。
香月の理想とする「名探偵」たることは、自分にはできないからですって!
緊張感の漂うふたりの関係も、興味のひとつ。
4つの事件は、「白幽霊」「禁区」「交換殺人」「時間外返却」。
漢字のみのタイトルが、また漢字好きの私の好みです。
いずれも私の土地勘のある場所が登場していたので、その点でも思わずニヤリ。
香月ワトソンいわく、
「名探偵は与えられた事象から、論理的想像力を駆使して、その陰に潜む悪意を読みとることが出来る特別な人種だ。たった一本の煙草の吸い殻やたった一瓶のヨードチンキから犯罪者の意図や正体を暴いてしまう」(「時間外返却」より)
思わず、嬉しくなってしまいました!
なんの作品を指しているのか、すぐにわかって♪
ヨードチンキ!!
もう大好きだよ~~~EQ。
こういうニンマリがたまりません。
一番面白かったのは「禁区」。
真相を暴いていく場面が、ちょっとシュールでスリムで、一番印象に残りました。