2009
作者・杉本章子さんの歴史エッセイ的な文章は読んだことがあったのですが、小説はこれが初めて。
古本屋さんで、ひょいと手にとりました。
1982年に書かれた長編です。
***以下、写楽の正体を含め、作品の内容に触れています。
タイトルを見ると、「おっ、東洲斎写楽が主役か!」と思いましたが、主人公は写楽の作品を出版した、版元の蔦屋重三郎。
それも、青春時代の青臭い重三郎から、壮年期の酸いも甘いもかみ分けた重三郎まで。
人間「蔦屋重三郎」の成長ももちろんですが、
版元「蔦屋」の出発点から、成功していく過程を楽しめるのも、大変興味深いです。
寛政期の文学者たちが大勢登場します。
高橋克彦氏の『京伝怪異帖」にも登場した、平賀源内、山東京伝をはじめ、恋川春町、朋誠堂喜三二、大田南畝など、惜しげもなく、重要な役どころでの出演です。
一流の文化人ですが、それぞれやたらと人間くさいところが魅力です。
長い期間を作中で扱うので、各個人の人生の紆余曲折も、心を打たれます。
蔦屋によって育てられたといってよい、歌麿も、その人間の弱さとともに、
あますところなく描かれます。
朴訥とした歌麿が、最後は重三郎を裏切るところまで行き着くのが、
なんともいえず、切なく苦いです。
そして、蔦重を扱えば、気になるのが、写楽の正体ですが。
冒頭にちょいと出てきて、重三郎の一生に大きな影を追わせた、実父の失踪。
「きっとこれが何か関係するんだなぁ」
と思ってはいましたが、このお父さんその人が写楽でした…わわ、びっくり!!
その父と二人三脚で、江戸の社会を席巻した、写楽の役者絵。
でも、その幸福も短く、写楽の死で、幕を閉じるのでした。
(写楽の作画期間が短いのは、写楽本人の死のため、というもの)
重三郎は、出版の世界では、華々しく活躍をしましたが、
おしの(彼が唯一、心底愛した女性。添い遂げられぬままに自害して果てました)のことにしろ、
父のことにしろ、
彼の愛した人々との幸いは、ほんとにほんとに短かったことが、
読後の哀惜を深めます。
古本屋さんで、ひょいと手にとりました。
1982年に書かれた長編です。
***以下、写楽の正体を含め、作品の内容に触れています。
タイトルを見ると、「おっ、東洲斎写楽が主役か!」と思いましたが、主人公は写楽の作品を出版した、版元の蔦屋重三郎。
それも、青春時代の青臭い重三郎から、壮年期の酸いも甘いもかみ分けた重三郎まで。
人間「蔦屋重三郎」の成長ももちろんですが、
版元「蔦屋」の出発点から、成功していく過程を楽しめるのも、大変興味深いです。
寛政期の文学者たちが大勢登場します。
高橋克彦氏の『京伝怪異帖」にも登場した、平賀源内、山東京伝をはじめ、恋川春町、朋誠堂喜三二、大田南畝など、惜しげもなく、重要な役どころでの出演です。
一流の文化人ですが、それぞれやたらと人間くさいところが魅力です。
長い期間を作中で扱うので、各個人の人生の紆余曲折も、心を打たれます。
蔦屋によって育てられたといってよい、歌麿も、その人間の弱さとともに、
あますところなく描かれます。
朴訥とした歌麿が、最後は重三郎を裏切るところまで行き着くのが、
なんともいえず、切なく苦いです。
そして、蔦重を扱えば、気になるのが、写楽の正体ですが。
冒頭にちょいと出てきて、重三郎の一生に大きな影を追わせた、実父の失踪。
「きっとこれが何か関係するんだなぁ」
と思ってはいましたが、このお父さんその人が写楽でした…わわ、びっくり!!
その父と二人三脚で、江戸の社会を席巻した、写楽の役者絵。
でも、その幸福も短く、写楽の死で、幕を閉じるのでした。
(写楽の作画期間が短いのは、写楽本人の死のため、というもの)
重三郎は、出版の世界では、華々しく活躍をしましたが、
おしの(彼が唯一、心底愛した女性。添い遂げられぬままに自害して果てました)のことにしろ、
父のことにしろ、
彼の愛した人々との幸いは、ほんとにほんとに短かったことが、
読後の哀惜を深めます。
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